日常生活で使う家電製品が発する電磁波(EMF: Electric and Magnetic Fields)(非電離放射線の一種)について「電磁波は体内に溜まるのか?」という疑問がよく寄せられます。
EMF(電磁波)とは?
電磁波には、低周波(ラジオ波や電力線)、中周波(マイクロ波やレーダー)、高周波(X線やガンマ線)などと一般には分類されます。
家電製品から発生するEMFは主に低周波から中周波の範囲に属し、携帯電話、電子レンジ、Wi-Fiルーターなどが発する電磁波は日常的なEMFの代表例です。
電磁波が体内に溜まることはない
結論から申しあげれば、家電製品が発するEMFが体内に「溜まる」ことはありません。
電磁波はエネルギーとして空間を伝播します。体内に蓄積するという物質自体を持っていません。
特にEMFは体表面を伝わることはあっても、体内に保持されるわけではなく、体を通過した後は消散します。
引用:名古屋文理大学紀要
電磁波が体を通過するか、通過しないかの比較
電磁波が体を通過するかどうかは、その周波数やエネルギーの強さに依存します。
- X線やガンマ線(高周波・高エネルギー):これらの電磁波は高エネルギーであり、体内を通過します。X線は医療用の画像診断で骨や内臓の透過撮影に使われるほど、体内を透過する性質を持っています。
- ミリ波(中周波):携帯電話の5Gなどの技術から導入されたミリ波は人が集まるスポットなどで限定的に用いられる30GHz程度の短距離周波数です。携帯電話の日常の通信で用いられることはありません(届かない)。そのミリ波も皮膚表面でほとんどが吸収され、体内に深く浸透することはありません。
この性質からボディスキャナーや通信技術に使われていますが、影響は皮膚の数ミリメートルに限定されます。 - 紫外線(高周波):紫外線も体表面、特に皮膚に作用します。紫外線A (UVA) は皮膚の奥まで届くことがありますが、紫外線B (UVB) や紫外線C (UVC) は表皮で吸収されます。いずれも体内に深くは浸透しません。
- 家電製品の低周波・中周波EMF:家電製品から放出される電磁波はエネルギーが低いため、体内に深く浸透することはありません。例えば、携帯電話や電子レンジ、IHクッキングヒーターなどの家電製品から発するEMFは、皮膚の極めて浅い部分に作用することがあります。
家電製品のEMFは体にどれほど影響を与えるか?
家電製品のEMFの影響は、非常に限定的です。
国際的な基準では、家電製品から放出される電磁波の量は人体に影響を与えない範囲で厳しく規制されています。よって、EMFが体に「溜まる」という心配は不要です。
ただし、X線やガンマ線などの高エネルギー放射線(これはEMFでもなく、電離放射線という全くレベルの違う電磁波です)は例外で、体に大きな影響を及ぼす可能性があるため、医療機関での適切な使用が求められます。
電磁波に対する対策
本来であれば対策の必要はありませんが、各国は「慎重なる回避(Prudent Avoidance)」として「プレコーショナリ対策」という考え方を打ち出しています。電磁波に反対して過度の不安を感じる人、自主的に対策したい、と感じている人に対して、知識を共有し、間違った対策をしないように、より適切な不安対策として紹介する場合があります。どうしてもEMFの影響が気になって仕事や生活に集中できない、と感じる場合においてのみ、心身の不安を取り除くために、家電製品の使用時間を意識的に短くする、電磁波源から距離を取る、電磁波をシールドするとされる製品を使ってみる、携帯電話を耳元に長時間当て続けない、夜間のWi-Fiルーターをオフにするなど、適切な対応を行うことで健全な精神状態が保てる場合があります。
以上のように、電磁波の性質は複雑です。少なくとも家電製品に属する機器が発する電磁波は人体の中に入り込むことがないように厳しく法律で販売/使用量が規制されています。
浸透するといっても表面的であったり、電離放射線の体内浸透と勘違いして「全ての電磁波は体に入る」と思ってしまったり、放射能と似たようなものだと解釈してしまい、体に蓄積すると思ってしまったりします。
電気や電磁波の知識は、非常に難解で、本来数学の指揮でやりとりする分野です。
誰かと電気の話をする時は、本来きちんと数式を用いて行えるほどの知識が必要です。
もし分からない知識に出会ったら、まずしっかりと学習する余裕を持てるようにしてゆきたいですね。