アーシングをしながら眠ると、脳の中では何が起きているのでしょうか?
この問いに、脳波という客観的な物差しで近づいた動物実験が、学術誌『International Journal of Molecular Sciences』に掲載されています。韓国・慶熙大学の研究チームが、コンセントの接地端子につなぐアーシングマットの上でラットを過ごさせ、睡眠の脳波と脳の中の物質を調べた研究です。
アーシングマットで21日間過ごしたラットは、何もしないラットと比べて、
- 目が覚めている時間が短く、レム睡眠・ノンレム睡眠・総睡眠時間が長くなっていました
- 覚醒を保つ物質「オレキシン」を染色で確認できる陽性細胞が少なくなっていました
つまり、眠りの量の変化と、脳の「覚醒のスイッチ」の変化が、同じ向きにそろって見えたということです。
ラットを対象にした実験で、人の睡眠を測った研究ではありません。それでも協会がこの研究を興味深いと考えるのは、屋内で行うアーシングと同じ方式のマットを使い、睡眠の変化を脳波と脳内の物質の両方から示しているからです。
では、どのような実験で、何が分かったのでしょうか。
研究結果:アーシングマット21日でラットの睡眠脳波が変わった
4つのグループを比べた実験
研究には、成体の雄のラット(Sprague-Dawley 系)が使われ、次の4つのグループに分けられました。
- 何もしない群(6匹)
- アーシングマットで7日間過ごした群(7匹)
- アーシングマットで21日間過ごした群(5匹)
- 電気毛布で21日間過ごした群(7匹)
アーシングマットは、綿のシートと放電板からなり、コンセントの接地端子(アース)につなぐ方式です。
ラットの頭には脳波を測る電極が取り付けられ、無線で記録されました。脳波は曝露の前と21日後に、午後6時から12時間記録し、専用のソフトで「覚醒」「レム睡眠(夢を見ることが多い浅めの眠り)」「ノンレム睡眠(脳が休む深めの眠りを含む)」に自動で分けています。
脳波:21日群は覚醒が短く、睡眠が長かった
21日間アーシングマットで過ごした群は、何もしない群と比べて、覚醒時間が短く、レム睡眠・ノンレム睡眠・総睡眠時間が長くなっていました(覚醒・レム・ノンレムは p<0.05、総睡眠は p<0.001)。
電気毛布で21日間過ごした群と比べても同じ向きの差があり、覚醒時間の短縮(p<0.001)、レム睡眠(p<0.01)、ノンレム睡眠(p<0.001)、総睡眠(p<0.001)の増加が報告されています。
一方、7日群の脳波には、何もしない群との差は示されていません。脳波で差がはっきりしたのは、21日間続けた群でした。
脳の中:覚醒を保つオレキシン陽性細胞が少なかった
研究チームは、睡眠と覚醒の切り替えに関わる脳の「外側視床下部」を調べました。ここにある神経細胞が作るオレキシンは、目覚めた状態を保つ働きを持つ物質です。
オレキシン陽性細胞の数は、7日群・21日群のどちらでも、何もしない群より統計的に有意に少なくなっていました。21日群は電気毛布群と比べても有意に少ない結果でした。
脳の中:抗酸化酵素 SOD1 陽性細胞が多かった
同じ外側視床下部で、活性酸素を分解する抗酸化酵素 SOD1 陽性細胞を数えたところ、7日群・21日群のどちらでも、何もしない群より有意に多くなっていました。
脳波の変化は21日群で、オレキシンと SOD1 の変化は7日群からすでに見られた、という結果の並びになっています。
測定の読み方:オレキシン陽性・SOD1陽性とは、染色でそれぞれの物質を確認できた細胞を指します。陽性細胞数の変化だけから、神経細胞そのものが減ったり増えたりしたとは判断できません。
科学的な説明:オレキシンは「覚醒のスイッチ」
オレキシンは、外側視床下部の神経細胞だけが作る物質で、目覚めた状態を保つ役割を担っています。論文の序論によると、オレキシンを持たないマウスはナルコレプシー(日中に強い眠気が起きる睡眠の病気)に似た状態になり、オレキシンの受け手(受容体)をふさぐ薬は、動物でも人でもレム睡眠とノンレム睡眠を増やすことが知られています。オレキシンの受容体をふさぐことは、不眠症の新しい治療の方法と位置づけられています。
つまり「オレキシンの働きが弱まる」と「眠りが増える」は、すでに知られている同じ方向の関係です。今回、オレキシン陽性細胞が少なかったことと、脳波で睡眠が長かったことは、この既知の仕組みと整合します。
SOD1 についても、論文の序論は、起きている間にたまった活性酸素が睡眠中に取り除かれること、睡眠不足のラットやマウスでは脳の酸化ストレスを取り除く力が落ちることを挙げています。著者らは、SOD の増加は、脳の酸化に対する守りが高まったことを示している可能性があると考察しています。
著者らは、アーシングマットの作用は、覚醒に関わる外側視床下部への影響と抗酸化の働きによる可能性があるとしたうえで、詳しい仕組みはまだ解明されていないと述べています。
アーシングとの関係:屋内のコンセント接地と同じ方式
この研究で使われたのは、コンセントの接地端子につなぐマットです。屋外で裸足になるのではなく、室内で寝床やデスクに敷いて使うアーシングと同じ方式で、睡眠の客観的な指標である脳波を測った点に、この研究の価値があります。
これまでの人の研究とも、向きが重なります。
- 軽度のアルツハイマー型認知症の人を対象にした12週間の試験(Lin ら、2022年)では、偽の接地(つながっていないもの)を使った群と比べ、接地した群で睡眠の質の評価が有意に良くなったと報告されています。
- 睡眠や痛み、ストレスの悩みがある12人が、自宅のベッドで導電性のマットレスパッドを使って8週間接地して眠った研究(Ghaly ら、2004年)では、夜間のストレスホルモン(コルチゾール)が下がり、睡眠の悩みもほぼ全員で軽くなったと報告されています(対照群のない研究です)。
- 今回と同じ研究室は、ストレスを受けたラットでアーシングマットが不安のような行動を減らし、ストレス反応の司令役であるホルモン CRF を脳内で下げたことも報告しています(Park ら、2023年)。
人の研究で見えてきた「眠りの質」や「夜のストレスホルモン」の変化に対し、今回のラットの研究は「脳の中で何が動いているのか」という問いに、脳波と脳内の物質から近づいたものといえます。協会ではこれまでに、頭蓋の電極で接地したラットの学習・記憶の研究も紹介してきました(ラットの学習・記憶とアーシングの研究)。動物研究の対象が、記憶から睡眠へと広がってきています。
なお、各群は5〜7匹と少なく、対照は「何もしない群」と「電気毛布群」で、配線だけで接地しないマットの群は置かれていません。マットは提供企業のもので、その企業に所属する研究者が著者に含まれています。
協会の考察:アーシングと睡眠・健康への可能性
ここからは、今回の結果と関連する研究をもとにした協会の考察です。協会では次のような可能性があると考えています。

可能性1:脳の「覚醒・緊張のスイッチ」が下がり、眠りに入りやすくなる
今回のラットでは覚醒を保つオレキシン陽性細胞が少なく、同じ研究室のストレス研究ではストレス反応の司令役 CRF が下がり、人では夜間のコルチゾールの低下が報告されています。協会では、接地しながら過ごすことで、脳の覚醒や緊張に関わる働きが穏やかになり、それが寝つきや眠りの続きやすさにつながっているのかもしれないと考えています。確かめるには、人で接地と偽の接地のマットを比べ、脳波を含む睡眠の測定(睡眠ポリグラフ)を行う研究が考えられます。
可能性2:眠りと一緒に、脳の「酸化への守り」が整う
今回、抗酸化酵素 SOD1 陽性細胞が増えていました。睡眠は脳にたまった活性酸素を片づける時間でもあります。協会では、接地しながら眠る習慣が、眠りの量だけでなく、脳を酸化から守る働きを支えることにもつながる可能性があると考えています。人では、睡眠の測定と合わせて酸化ストレスの指標を調べることで確かめられます。
可能性3:続けることで、脳の変化が眠りに表れてくる
オレキシンと SOD1 の変化は7日群から見られた一方、脳波の差がはっきりしたのは21日群でした。協会では、期間によって測定項目の反応が異なる点を、継続した実践を研究する手がかりと考えています。このラットの結果から、人の脳で準備が進んでいることや、必要な実践期間を判断することはできません。人で1週目と3週目の睡眠を比べる研究があれば、この点を確かめられます。
寝室で始める、屋内のアーシング
今回の研究で使われたのは、特別な屋外の環境ではなく、コンセントの接地端子につなぐマットでした。これは、毎日の暮らしの中で無理なく続けられる方法です。
- アース付きのマットやシーツを寝床に敷き、眠っている間に肌が触れるようにする
- 寝る前のくつろぐ時間に、マットに足を乗せて過ごす
- 日中のデスクワーク中も、足元のマットに素足で触れる
今回の21日という期間はラットの実験条件で、人に必要な期間を決めるものではありません。実践するときは無理のない時間から始め、寝つきや目覚めの感じを記録すると、自分の習慣を振り返る手がかりになります。
眠りは、心と体を整える毎日の土台です。夜の時間に大地とつながる習慣が、健やかな眠りを支えるひとつの方法になる可能性を、協会はこれからも研究とともに伝えていきます。
出典・参考研究
- Ye M, Jeong W, Yu H-j, Kim K-r, Rhie SJ, Kim Y, Kim J, Shim I. Effect of Earthing Mats on Sleep Quality in Rats. International Journal of Molecular Sciences. 2024;25(18):9791. DOI: 10.3390/ijms25189791(全文)
- Lin CH, Tseng ST, Chuang YC, Kuo CE, Chen NC. Grounding the Body Improves Sleep Quality in Patients with Mild Alzheimer’s Disease: A Pilot Study. Healthcare. 2022;10:581. DOI: 10.3390/healthcare10030581
- Ghaly M, Teplitz D. The biologic effects of grounding the human body during sleep as measured by cortisol levels and subjective reporting of sleep, pain, and stress. Journal of Alternative and Complementary Medicine. 2004;10:767-776. DOI: 10.1089/acm.2004.10.767
- Park HJ ほか. Biomedicines. 2023;11(1):57.(PubMed)
室内で実践するときは、電気的な安全が確認された接地環境と、説明書に沿った方法を使ってください。電源の差込口や水道管へ自己判断で配線せず、不調があれば中止して状況を確認しましょう。体の対地電圧が下がることだけで、配線の安全や健康効果を保証することはできません。
