「アーシングは、脳の働きや記憶にも何らかの影響を与える可能性があるのでしょうか?」
このテーマについて興味深い研究が、2026年9月、神経科学分野の学術誌『Neuroscience』に発表されました。
研究では、雄のラットを頭蓋に設置した電極を通して大地電位へ接続し、7日、14日、21日、28日と継続して接地しました。
その結果、特に21〜28日間接地したラットでは、
- 場所を覚える能力
- 新しい物を見分ける能力
- 一度経験したことを覚えて避ける能力
といった複数の学習・記憶テストで改善が報告されました。
さらに脳の「海馬」では、炎症や酸化ストレスに関係する指標の低下、体を酸化ストレスから守る働きに関係する指標の上昇、さらに記憶や神経の可塑性に関係するBDNF(学習や記憶、神経細胞の働きを支える物質)の増加も確認されています。血液中ではストレス反応に関係するコルチコステロンの低下も報告されました。
今回の研究は、人で一般的に行われるアーシングとは異なる実験方法ですが、アーシングと脳・学習・記憶との関係を考えるうえで、新しい可能性を示す興味深い研究です。
どのような研究だったのか
研究には、健康な雄の実験用ラット48匹が使われました。
ラットは8匹ずつ、次の6グループに分けられています。
- 通常の対照群
- 頭蓋への処置は同じように行うが、大地には接続しない比較群
- 7日間接地する群
- 14日間接地する群
- 21日間接地する群
- 28日間接地する群
接地群では、頭蓋に設置した電極と大地接地システムを接続し、1日24時間、継続して大地電位へ接続しました。
これは電気刺激装置から一定の電流を流す実験ではありません。
研究者らは、あらかじめ決められた電流を脳に流す「電気刺激」ではなく、電極を大地電位へ受動的に接続する方法として実験しています。

複数の「記憶」を調べた
この研究では、一つの記憶テストだけで判断していません。
ラットが水の中で目標の場所を覚えられるかを見るテスト、新しい物と以前見た物を区別できるかを見るテスト、一度経験した状況を覚えて避けられるかを見るテストなど、異なる種類の学習・記憶能力が調べられました。
さらに、単純にラットの活動量が増えただけではないかを見るため、自由に動いた距離や速度についても調べています。
その結果、21〜28日の接地群では複数の記憶課題で改善が見られた一方、通常の運動活動には明確な差が確認されませんでした。
この点は今回の研究を見るうえで重要です。
単に接地したラットが活発になり、たくさん動いたためにテスト成績が良くなった、というだけでは説明しにくい結果だからです。
脳の中でも複数の変化が確認された
さらに興味深いのは、行動テストだけではなく、記憶に深く関わる脳の「海馬」でも複数の変化が確認されたことです。
接地期間が長くなったグループでは、
- 炎症に関係する指標の低下
- 酸化ストレスに関係する指標の低下
- 酸化ストレスから体を守る働きに関係する指標の上昇
- BDNFの増加
- 血液中のコルチコステロンの低下
が報告されています。
BDNFは「脳由来神経栄養因子」と呼ばれる物質で、神経細胞の働きや神経回路の変化、学習・記憶などとの関係が研究されている物質です。
つまり今回の研究では、
「記憶テストの結果だけが変わった」
のではなく、
「記憶に関わる行動」と「海馬の状態に関係する複数の生化学的指標」が同じ時期に変化していた
という点が非常に興味深いところです。
炎症・酸化ストレス・ストレス反応が同時に変化したことに注目
今回の結果を見ると、変化は一つの指標だけに限定されていません。
海馬では炎症に関係するIL-1β、IL-6、TNF-αが低下し、酸化ストレスの指標であるMDAも低下しました。
一方で、酸化ストレスから体を守る仕組みに関係するSODやGSHは増加しています。
さらにBDNFの増加と、ストレス反応に関係するコルチコステロンの低下も確認されました。
これらはそれぞれ別の生理的な仕組みに関係するものですが、脳の環境やストレス反応、学習・記憶を考えるうえで互いに無関係ではありません。
アーシングによって一つの物質だけが変化するのではなく、炎症、酸化ストレス、ストレス反応、神経の可塑性などが複合的に変化する可能性を考えるうえで、興味深い結果と見ることができます。
これまでのアーシング研究ともつながる結果
今回の研究だけが、アーシングと脳やストレス反応との関係を報告しているわけではありません。
2025年には、神経毒によって記憶障害や脳の炎症を起こしたラットを使った研究で、アーシングマットに接触させたグループに記憶課題の改善や炎症関連指標の変化が報告されています。
また、2022年に発表された別のラット研究では、継続的なストレスを与えたラットをアーシングマットに接触させたところ、不安に関連する行動や、脳のストレス反応に関係するCRF、c-Fosなどに変化が報告されています。
研究条件はそれぞれ異なるため、単純に同じ結果としてまとめることはできません。
しかし、
- ストレス反応
- 炎症
- 脳機能
- 記憶
という領域で、複数の動物研究からアーシングに関連する変化が報告されていることは注目すべき点です。
今回の新しい研究は、こうした過去の研究とつながる結果の一つと見ることができます。
アーシングの可能性を考えるうえで興味深い研究
では、なぜ大地へ接続することで、このような変化が起こったのでしょうか。
現時点では、詳しい仕組みまでは分かっていません。
今回の研究でも、脳の電気活動や神経細胞の膜電位、組織を実際に流れた電流などは測定していません。
そのため研究者らも、「大地への接続が脳を直接電気的に刺激した」と結論づけているわけではありません。
一方で、実際に21〜28日の接地後には、複数の記憶課題と、炎症・酸化ストレス・BDNF・ストレス反応に関係する指標に変化が観察されています。
作用の仕組みがまだ十分に分かっていないことと、実際に観察された変化があることは、分けて考える必要があります。
今回の結果は、
「大地電位へ体を接続することが、生体のストレス反応や炎症、酸化ストレスなどを介して、結果的に脳機能にも影響する可能性があるのではないか」
という仮説を考える材料になります。
これまでアーシング研究で報告されてきたストレスや炎症に関係する変化と、今回の学習・記憶に関する結果をつなげて考えることも、今後の重要な研究テーマになりそうです。
今回の研究で知っておきたいこと
今回の研究では、健康な雄のラットを対象に、頭蓋に設置した電極を通して24時間継続的に大地電位へ接続する方法が使われました。
裸足やアーシングマット、アーシングシーツによる一般的なアーシングとは方法が異なりますが、大地電位への継続的な接続によって、複数の記憶課題と海馬の状態に関係する指標に変化が確認されたことは興味深い結果です。
今回の研究は、アーシングと脳機能、学習・記憶との関係を考える新しい材料の一つになります。
今後、一般的な皮膚接触によるアーシングでも同じ方向の変化が確認されるのか、さらに人でも同様の傾向が見られるのかが研究されれば、アーシングの可能性をより深く理解する手がかりになると考えられます。
まとめ
今回の研究では、頭蓋電極を通して大地電位へ継続的に接続したラットで、21〜28日後に、
- 複数の学習・記憶課題の改善
- 海馬の炎症関連指標の低下
- 酸化ストレス関連指標の改善
- BDNFの増加
- ストレス関連ホルモンの低下
が報告されました。
さらに運動活動には大きな差が見られなかったことから、単純にラットが活発になったことだけでは説明しにくい結果となっています。
そして今回の研究は、これまで報告されてきたアーシングと炎症、ストレス反応、認知機能に関する動物研究とも重なる部分があります。
まだ詳しい仕組みや人への影響については今後の研究が必要ですが、アーシングが生体にどのような影響を与えるのかを考えるうえで、研究領域が「学習・記憶」へと広がってきたことは非常に興味深い動きです。
アーシングの可能性を科学的に考えていくうえで、今後の研究につながる重要な研究の一つといえるでしょう。
出典・参考研究
Kalhour M, Zeinivand M, Kavyannejad R.
Effects of prolonged grounding-based transcranial coupling to earth potential on learning, memory, and hippocampal biochemical status in male Wistar rats.
Neuroscience. 2026.
DOI: 10.1016/j.neuroscience.2026.08.051
PMID: 42692391
Ye M, et al.
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Journal of Exercise Rehabilitation. 2025;21(1):10-15.
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Park HJ, et al.
The Effect of Earthing Mat on Stress-Induced Anxiety-like Behavior and Neuroendocrine Changes in the Rat.
Biomedicines. 2023;11(1):57.
DOI: 10.3390/biomedicines11010057
※本記事は研究情報の紹介を目的としています。研究結果は実験条件や対象によって異なり、特定の疾病に対する治療効果を示すものではありません。

